熊本地方裁判所 昭和52年(わ)623号 判決 1978年3月24日
本籍
熊本県八代郡鏡町大字鏡町八六番地
住居
熊本県八代市中北町三、〇五六番地
鮮魚卸売業
宮川義隆
大正一二月九月二一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官吉村弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、熊本県八代市において、鮮魚卸売業等を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、鮮魚の売上げの一部を除外して自己名義・架空名義・無記名の定期預金・定額郵便貯金を設定し、架空の仕入れを計上するなどして自己の所得を秘匿したうえ、昭和五〇年三月一五日、同市花園町一六番地二号所在の八代税務署において、同税務署長に対し、昭和四九年分の実際の総所得金額が六、〇八四万三、六八八円で、これに対する所得税額は三、二〇一万八、六〇〇円であるにもかかわらず、自己の総所得金額が一、二四〇万一、七〇四円で、これに対する所得税額が三二六万九、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、昭和四九年分の正規の所得税額三、二〇一万八、六〇〇円と右申告所得税額三二六万九、三〇〇円との差額二、八七四万九、三〇〇円の所得税を免れたもの(総所得金額及び税額算定の経過は別表第一及び第二記載のとおり)である。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書二通
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一九通
一、被告人作成の上申書三通
一、中村年男、山下輝夫、明劦一芳、内田哲、宮川亨及び宮川潔の検察官に対する各供述調書
一、中村年男、明劦一芳(二通)、本間薫、内田哲(三通)、田中春男、遠山千代太郎、宮川良助(二通)、宮川昭三、宮川亨及び木部秀男の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、八代税務署長作成の所得税の青色申告の承認取消し通知書写
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書、脱税額計算書説明資料、調査事績書三五通、臨検てん末書、検査てん末書一二通及び電話聴取書八通
一、竪山真護、井上吉平、左甲真一、箱田暢之、川原田寿雄、佐々木襄、酒井五郎(二通)、進藤悦宏、田中資二、吉田権一郎、西川義幸、宮本勝弥、猪上文男、吉良明直、山本隆敏、上蔀一徳、山本登、児玉龍之助及び淀川静男(二通)各作成の各証明書
一、浜口貞義、宮崎県、河村勝年及び沢田和子各作成の各上申書
一、原三郎及び味舌竹三各作成の各回答書
一、押収してある日記帳三冊(昭和五三年押第二三号の1ないし3)、売上仕切書綴二冊(同押号の4及び5)、現金出納帳二冊(同押号の6及び17)、青色申告決算資料綴一冊(同押号の7)、元帳一冊(同押号の8)、支店出納帳、元帳一冊(同押号の9)、領収証他計算書綴一冊(同押号の10)、領収証綴三冊(同押号の11、13及び15)、請求書綴一冊(同押号の12)、売買仕切書綴一冊(同押号の14)、領収証綴請求書綴一冊(同押号の16)、試算表綴一冊(同押号の18)、普通預金元帳一冊(同押号の19)、手形貸付元帳二冊(同押号の20及び21)、定期預金元帳三枚(同押号の22、23及び25)、継続式定期預金明細表一枚(同押号の24)、四九年分の所得税の確定申告書一枚(同押号の26)、青色申告者書類綴一冊(同押号の27)並びに領収証一枚(同押号の28)
(法令の適用)
被告人の判示所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、懲役刑と罰金刑を併科することとし(なお罰金刑については、同条二項適用)、所定刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉田修)
別表第一 修正貸借対照表 (昭和49年12月31日現在)
<省略>
<省略>
(事業所得の公表金額)+(事業所得の当期増減金額)+(譲渡所得の当期増減金額)=(((犯則)総所得額))
(12,401,704円)+(48,418,556円)+(23,428円)=((60,843,688円))
(注)「内」とあるのは、別表第二の犯則額算定の基礎となる金額である。
別表第二
<省略>